私、今から詐欺師になります
 少し図書館で働いていたことはあるが、そんなに稼げていたわけではない。
 すぐに秀行と結婚してしまったし。

 そうだな、と頬杖をついて、秀行は側を通って行く観光客らしい家族連れを見ていた。

 にんまり笑って言う。

「そうだ。
 結婚詐欺とかどうだ」

「は?」

「そうだ。
 そうしろ。

 お前に他に出来そうなものはない」

 さっき結婚詐欺だと言ったことに対する嫌がらせだろうかな、と思う。

「それがもっとも出来ない気がするんですけどっ」

 そう主張してみたが、
「なにをやってもどんくさいお前に、ルックス以外の取り柄はないだろうが」
と言い切られる。

「図書館で本を並べてたら、上から全部落っことしてくるようなお前にはな」
と言われ、うっ、と詰まった。

「結婚してやめてくれてよかったと思われてるぞ、絶対」

 いいことしたな、俺、とか呟いている。
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