この胸いっぱいの好きを、永遠に忘れないから。
「はぁ……」
私はため息をつき、窓の外を見た。
少し開いた窓から風が通り過ぎる。
陽の光は丸みを帯び、とてもやわらかい。
冷たさも感じない。
ここからは、あの大きな木は見えないんだ……。
入学初日にして、色々なことがありすぎる……。
大森先生の声を遠くに、私はポケットの中の指輪に触れた。
夢じゃなかった……。
あの指輪が……あのペアリングが、今、私のところにあるなんて……。
返した方がいいよね……。
"彼女と別れたらしいよ"
"あげる"
「……」
私が持ってていいわけない。
どうしたら、いいんだろう……。
「はぁ……」
けだるいような
春の憂鬱。