この胸いっぱいの好きを、永遠に忘れないから。
「あ……あの、あそこにあった指輪が欲しくて……」
「えーと……どちらの指輪でしょうか?」
私の言葉に苦笑いを隠しつつ、店員さんが営業スマイルを見せた。
「あ……あそこのウインドウに飾ってあった……」
店を入ってすぐ右手にある、大きなウインドウ。
そこに昨日まで飾られていた、ペアリング……。
「あ!それです!」
声をかけた店員さんの後ろ、カウンターの上、真っ赤なベロア素材の入れ物に並べられた2つの指輪を発見し、私は声を上げた。
「あ……申し訳ありません……こちらの商品、オリジナルの1点物で、ただ今こちらのお客様が……」
大声を上げた私に、笑いをこらえながらそう言うと、店員さんは視線をカウンターに立つ男性に向けた。