この胸いっぱいの好きを、永遠に忘れないから。
「じゃあね」と私に手を振ると、奈々ちゃんは急いで生徒会室に戻って行った。
後ろを向いた奈々ちゃんの髪が、ふわっと風に揺れた。
「……」
出会った時はベリーショートだったのに、ずいぶん髪が伸びてるなぁ……。
私は図書室の窓を更に開けた。
やわらかい風が、図書室に吹き込む。
卒業式が終わってすぐ、優也センパイとご両親は、自然の多い街へ越したと聞いた。
その後のことは、わからない。
遠い大学を受験するって、詳しく教えてくれなかったのは、越すことをもうわかっていたからなのかな……。
センパイの住む街にも、イチョウの木あるかな……。
私は窓辺に頬杖をつき、大イチョウを見つめた。