イゾンセイ
プロローグ
ガサ、ガサ
歩幅に合わせリズムよく手に持っている袋が動き、特有の音を出している。
「ふぁ…もう夕日沈んでってるそんな時間になってたのか」
目の前は赤く染まっていた。なんか街が燃えてるみたい。そう見えるみたいには赤い。ここ、ある程度都会なんだけどこんな風景が見れるのはなかなか風情がある。
家に帰ったらなにしよう、とかテレビはなににしようとか、当たり前のことをぼーっと考えていた。
公園が見えてきた。公園からは子供が親と帰る姿が影になって見えた。
「いつまで遊んでたんだろ、はは、僕あんまり外でないからわかんないけど今の子供も元気なんだなぁ」
微笑ましい光景を見て口元が緩んだ。
僕もあんなふうに母親と過ごせていたら、なんて厄介なこと考えてしまった。
母親は昔に死んでしまった。家が火事になってそれで、
それで…なんだっけ深くはやっぱり思い出せなかった。友人の医者に聞いたら親を失ったストレスとかで記憶が飛ぶこととか稀にあるっぽくてそれなんじゃないかと言われた。だから定期的にそいつに診ては貰っている。不本意なんだけど。
父親?いたとは思うけど見たことないんだ。離婚してるらしいし、どんな人物だったのか知らない。
公園を横切る。つもりだったが異常な光景があった。
14歳ぐらいの、髪が真っ白な男の子がブランコで死んだような顔で座っていた。
なんでだろう、放っておくことができなかった。
「君、どうしたの?もう日が落ちるよ、帰った方がいいんじゃないかな」
公園に入りその男の子に近づいてそう言った。
男の子はこちらに顔を向けた。
外国人なのかな、目が青くて透き通ってる。綺麗。ビー玉をそのままはめ込んだみたい。
「あ…僕、家ないんだ。だから帰る場所なんてないからここに泊まろうかなって」
男の子は無表情のまま淡々とそう言った。
僕は無意識に
「なら僕の家に来なよ!1人だし君が増えても大丈夫だって!ここに泊まったら君変なおっさんに連れてかれて変なことされるって!」
と言った。言ってしまったの方が正しそうだが。
「え、あの、そんな、見ず知らずの人に話しかけるお兄さんの方が僕にとったら怪しい人なんだけど」
「うぐ」
痛いとこついてくるなこの子…
「でもその方がましかも。いいよ着いていくよ」
なんだ、この子笑えるんだ。その子は笑っていた。僕も釣られて笑ってしまったけど、すぐにその子は真顔になってしまった。
「ん」
僕は手を差しのべた。
「一緒に帰ろっか」
「そんな子供じゃないんだけど…」
「今日から家族同然なんだから手を繋ぐぐらいいいじゃないか!」
「…やっぱり変な人」
そう言って男の子は手をぎゅっと握ってくれた。
それは、とてもとても強く。
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