Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-



 また、アルザは通商の他にも改革に着手していた。


まず、国を衰えさせる原因となった占中心政治を正すため、政教の分離を推し進めた。


さらに数年後には官職の登用に出自や財産、性別を問わぬ試験制度を導入するという。



 この変革が一度枯れかけたウィオンを蘇らせるか、はたまたとどめを刺すことになるか。


今、ウィオンはその分岐のちょうど間にいるのだ。



 だから、アルザが多忙なのはもちろんリーラもわかっていた。


わかっている上で、――だからこそ、婚礼を急ぐ必要があると考えていた。



「けれど、結婚という形でウィオンとシュタインが結ばれることで、商人もシュタインとの行き来がしやすくなるというものですわ。それになにより、これ以上婚礼の儀を遅らせては、それこそ民の不安を煽ることとなりましょう?」



 祝い事を先延ばしにするということは、それだけ余裕がないということだ。


民は不穏な空気に敏感だ。


アルザとリーラの間に、そろそろ動きを起こさねばならない頃合いになっていた。



「それについてはもちろん、陛下も考えておいでです。ご安心ください、姫殿下」



 遠くで午後の鐘が鳴った。


空になったカップを置き、レグナムはもともと閉じた目をさらに細めるようにして笑う。



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