Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
「このところ陛下を煩わせているマナンの件が一段落すれば、婚礼の準備に取り掛かられるそうです」
「マナン?」
リーラが聞き返すと、始終穏やかな表情だったレグナムの頬が、わずかに強張った。
しまった、というふうなその表情は、けれど一瞬のことで、レグナムはちらと眉を上げ、腰を浮かせた。
「申し訳ありません、姫殿下。仕事の合間に抜け出してきたもので。もう戻らなくては」
かわされた。
そう思ったが、ここで彼を引き留めて問い詰めるわけにもいかない。
「いいのよ。気にせず仕事に戻ってちょうだい。いつも忙しいなか、話し相手になってくれて感謝しているわ」
気まずそうに眉を下げるレグナムに言って、リーラは見送りに立ち上がる。
扉を開いてわきに退いたクロエに礼を言って出ていこうとするレグナムを、「そうだわ、ひとつ聞きたいのだけれど」と、リーラは呼び止めた。
「なんなりと、姫殿下」
「神殿に行きたいのだけれど、わたくしが行っても問題ないかしら」