Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-



 深々と礼をするメリーに、カインは「世捨て人は言い過ぎじゃないかなぁ」と抗議する。


そのあまりにも気の抜けたやり取りに、思わずリーラは吹き出してしまった。



「ふふ、いいのよ。そんなにかしこまられたら、わたくしだって話しにくいわ」



「だってさ、メリー。王妃殿下は優しいお方だね」



 ほくほくと笑うカインの隣で、メリーは沈鬱なため息をひとつ。



 この王宮に来て十日。


アルザやレグナム、そして侍女として最も長い時間を共に過ごすクロエを除いて、「王妃殿下」に対する取り繕った作り物の笑み以外の表情を、リーラはおそらく初めて見た。



「ねぇ、勉強不足で申し訳ないのだけど、神殿守りって何かしら」



 二人ともっと話していたくて、お供としてそばに控えるクロエに聞けばいいものを、リーラはあえて二人に尋ねた。



「あぁ、そういえば、シュタインのサザラ神殿には神殿守りがいないと聞いたことがあります。なら知らないのも無理はないですね」



 カインが人懐こい笑みを浮かべ、メリーの胸元を指差した。


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