Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
リーラがそう言うと、カインは笑みを深めて、
「まるで恋する乙女ですねえ」
ほくほくと笑うカインを睨みつけて、リーラはむくれたようにそっぽを向いた。
――恋する乙女などと、そんな暢気なものではない。
けれど、次に続くカインの言葉に、また振り返ることとなる。
「いっそ夜這いでもしてしまうのはどうでしょう?」
「な……っ!?」
ぐりん、と音が鳴りそうなほどの勢いで振り返ったリーラの顔が、みるみる赤く染まっていく。
「この馬鹿」と、メリーがカインの頭をひっぱたいた様子を見て、リーラはふと思いついて、にやりと笑った。
「あなたたち二人の方こそ、実はいい仲なんじゃないの?」
意趣返しのつもりで言ったが、効果はてき面のようだった。
ただし、メリーにだけ、だ。
メリーはみるみる赤くなり、照れ隠しのつもりか、ふたたびカインの頭をひっぱたく。
カインは相変わらずケロッとしたものだ。
彼女の意外な反応にいたずら心が首をもたげた。
「図星かしら?」と、さらにからかうと、
「断じて違います! 違いますからね、殿下!」