Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
リーラは身を起こして、できるだけ音をたてないように寝台からおりる。
寝台の下に隠した護身用の短刀を手に持つ。
足音を殺して窓辺に寄ると、かんぬきをはずして窓を開ける。
――そのとき、カチャ、と小さな音がリーラの耳に届いた。
鍵穴に、鍵をさした音。
ゆっくりと扉が開く。
入ってきた人物の顔は見えないが、うっすらと闇に浮かぶ影から、男だとわかる。
反射で叫んでいた。
「衛兵――――!!」
「え、わっ、ちょっと待て!」
リーラのよく通る声が、窓の外の薄青い空気に響き渡った。
男はその声に驚いたように一瞬固まり、けれどすぐに部屋の中へ入ってきて、慌てたようにリーラの肩を掴んだ。
「驚かせてすまない、リーラ姫、俺だ。アルザだ」
男は――アルザは言って、入り口を振り返ると、
「お前たち、すまないが、衛兵たちに何事もないと伝えに行ってくれるか」
と、廊下の衛兵に命じる。
混乱してぽかんと口を開けたままのリーラに向き直ると、アルザは笑った。