Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-



 国王の威厳など欠片も見当たらない、少年らしい笑み。


ウィオンに迎えられた日も、この王はこういうふうに笑った。



 この王の顔を見るのは、あの日以来だ。



「久しぶりだな、リーラ姫。……あぁいや、久しぶりですまないと、言ったほうがいいだろうか」



 アルザは困ったように眉尻を下げた。



「アルザ、国王陛下……」


「ん?」



 まだ呆然とした様子で、リーラは王の名を呼ぶ。


手が無意識のうちに動いて、アルザの頬に触れた。



「本物?」


「はは、なんだそれ」



 アルザは笑うが、そう思うのも当然だと、リーラは思った。


この数日ずっと、なんとかして会おうと躍起になっていた王が、目の前にいる。


あまりに唐突に望みが叶ったせいで、まるで夢の中にいるように現実感がない。



 こんな時間に、何をしに来たのだろう。


それを問おうとして、リーラの脳裏によぎったのは、カインの声。



――いっそ夜這いでもしてしまうのはどうでしょう?



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