Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
王にぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、子供は明るい笑い声を上げた。
つられたように姫も微笑み、「ありがとう、小さな紳士さん。大切にするわ」と言うと、子供の額に軽やかな口づけをする。
兵士たちは頬を染め、民衆からは歓声が上がった。
人ごみの中で見ていた子供の母親は、王と王妃の恩情に涙を流した。
心優しく美しい王妃と、快活で爽やかな王の睦まじい姿は、ウィオンとシュタインの和平、ひいてはウィオンの繁栄の徴(しるし)。
誰もが、二人の姿に国の未来を見た。
長きにわたる鎖国に疲弊した島国の民にとって、その姿は希望そのものだった。
こうしてシュタインの姫は、民の敬慕と称揚のまなざしと共に迎えられた。
姫の名はリーラ・セルディーク。
後に〝海賊姫〟と名を馳せる、ヴェルフェリアの智の女傑の、これが、はじまりの物語。