Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
「あ、いえ、そういう意味ではなく! ……相談したいことが、あって、だから! 変な言い方をしてごめんなさい!」
「あ、あぁ、そういう……いや、俺の方こそすまない」
そうだよな、婚礼の儀も済ませていないもんな、と、真っ赤な顔でごにょごにょと口の中でつぶやく。
王の威厳などかけらもない、そんなアルザの姿に、リーラは思わず吹き出した。
「ふふ、陛下、急がれませんとご政務が遅れますよ」
「あ、あぁ! そうだな、そろそろ行ってくる」
アルザは言って、今度こそきびすを返す。
けれど、その一挙一動がどこかぎこちない。
それを見てまたリーラがクスクス笑っていると、扉に手をかけたアルザが、ふと振り返った。
「リーラ姫」
「はい?」
「君は、姫ぶっていないときのほうが可愛い」
「は……?」
顔が熱い。
二度目だ。
けれど、一度目とは確実になにかが違う。
「好きなときに来るといい。俺の妻を止める門衛などいないから、心配するな。俺がいなかったら中で待っていてかまわない」
それじゃあ、と言って部屋を出て行くアルザを、リーラはなにも言えず見送った。
足音が遠ざかっても、まだ頬の火照りは冷めないままだった。