Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
カップの水面によく晴れた空が映っていた。
クロエの淹れてくれた花の香りのする琥珀色の茶に、羊の毛のようなふわふわとした雲がたゆたう。
穏やかな午後だ。見上げた空がいつもより綺麗に見える。
不安の種だったアルザと朝に話ができて、心がすこし晴れたからだろうか。
ざっ、と、草を踏む音がかすかに聞こえて、リーラは顔を上げた。
神殿の入り口の方から、歩いてくる人影がひとつ。
背の高い、近衛兵の制服を着た男。
「レグナム、ごきげんよう」
「ごきげんよう、姫殿下。いいお茶会日和ですね」
まっすぐリーラたちのいる方へ歩いてきながら、自然にそんなことを言ったレグナムに、リーラは驚いた。
「あなたって相変わらずすごいわ。見えないのに、お茶会をしてるってわかるのね」
「はい、カップの音で」
こともなさげに言うが、この男はいつもそうやって音や気配だけで、まるで見えているかのように世界を感じ取る。