Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-



 ヴェルフェリア大陸東端の半島、イスラ半島。その南北をそれぞれルイーネ、シュタインが支配しており、大国フェンネルがシュタイン北隣に大陸への入り口を塞ぐ形で位置している。


そのフェンネルがシュタイン侵略を目論んでいるという情報は他国の間では未だ噂にすぎないが、シュタインの姫であるリーラは、もちろんその噂がどこまで真実に近いのかを知っていた。

――しかし。



 そのフェンネルが、シュタイン侵略の足がかりとしてまずウィオンを狙っているというのは、今、レグナムから初めて聞いた。



 もともと自然豊かなウィオンは、ルイーネやシュタインを経由して果実や穀物、葡萄酒、象牙や真珠を大陸へ輸出する代わりに、絹や陶磁器、金銀に皮革、武器、麦酒などを輸入していた。


かつてより、豊富な原料を売れば苦労なく儲かったウィオンは、加工技術がさほど発展しなかった。


それ故、ウィオンの貴族や地主には他国の工芸品のコレクターが数多くいる。


――フェンネルはそこに目をつけた。



 先王による鎖国の折、これを好機とばかりに、ウィオンの小金持ちたちに裏で工芸品を売り、それとともにマナンをばら撒いたのである。



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