Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-



 他国のものというだけで珍しい閉鎖的な社会では、麻薬はまるで流行病のように、最初は徐々に、そしてある程度広まった時点からはみるみるうちに広まった。


地方の領主やその領民の多くがマナンの中毒となり、精神が崩壊して廃人のようになってしまっているという。



ウィオンは王都ケレトアのある王領ウィオリア以外の国土を六つの伯領に分け、それぞれを王の選んだ伯爵たちに治めさせているが、王領ウィオリアの東に接するガラハント伯領と、本島以外の細かな諸島を治めるストロック伯領以外の伯領は、すべて鎖国の三十年の間に領主が変わっている。


その原因はすべてマナンの中毒だ。




 もちろん、軍は総力を挙げてマナンの駆逐をしようとしているが、しかし長い鎖国のせいで、密輸船をすべて取り締まれるほど海軍が発達しておらず、マナンの駆逐は追いつかない。


それどころかフェンネルの奴隷狩り商人が普通の商人の顔をしてウィオンに入り込み、マナン中毒者を奴隷としてフェンネル貴族や大陸の国へ売られているという。


そしてそこで得た資金でまたマナンをウィオンへ運び込む。


密輸船の海賊行為のせいで商人が国外貿易をしたがらないから、国外から来てくれる商人の流れを止めるわけにもいかない。


フェンネルの商人だけを厳しく取り調べたこともあったが、密輸商人のやり方は巧妙で、軍の網をうまくすり抜けられてしまう。



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