Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
マナンを取り締まる決定的な手段がなく、軍はマナン商人の影をただ追い回しているだけ、というのが現状だ。
「――さ、これですべてお話ししましたよ。ご満足いただけましたか、姫殿下?」
すべて話し終えて、レグナムは茶を一口飲むとそう言った。
「えぇ。ありがとう、話してくれて」
「あなたはあなたの主張を通された。次は私の主張を聞いていただきます」
口もとにはいつもの柔らかい笑みを浮かべて、リーラの言葉に間髪入れず、レグナムは言う。
物腰の柔らかい彼には珍しく、有無を言わせぬ口調だ。
リーラは不意を突かれて押し黙った。
「ご存知のように、女性が政治に口を出すことは、長らくウィオンでは忌避されていました。陛下の改制があっても、人の心とはなかなか変わるものではありません。だからこそあなたは微妙なお立場にある」
「……えぇ、わかっているわ」