Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
優しいラシェル兄様。
どうか笑って。
花冠はいつも白だった。
愛する二人の兄と自分の、赤い髪と金の髪。
そのどちらにも似合うのが白だったから。
白い花冠は願掛けだった。
赤毛の王子がたしかに自分の兄だと、誰が何と言おうとこの国の第一王子だと、同じ色の花冠が示してくれるような気がしていた。
後ろから大好きな声が名前を呼ぶ。
作りかけの花冠を持って振り返る。
燃える赤髪を揺らして、愛する兄が大きく手を振る。
リーラは駆け出し、その胸に飛び込む――。
夢はそこで覚めた。
夢が遠ざかるとき、懐かしさと名残惜しさで、胸の奥がきゅっと締め付けられるような痛みを感じた。
薄く目を開くと、膝の上に丁寧に重ねた自分の指先が見えた。
どうやら座ったままうたた寝していたらしい、と気付いたとき、向かいから声がした。
「男の部屋でほいほい寝るのは感心しないな、リーラ姫?」
びっくりして顔を上げると、テーブルを挟んで向かいにアルザの顔があった。
なんで、とつぶやき、一拍おいて気づく。
――ここはアルザの自室で、アルザの戻ってくるのを待っているうちに眠ってしまったのだと。