Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-



 アルザはなおも渋る。その言葉を遮って、リーラは言った。



「陛下の理想はどんな国?」



 脈絡のない突然の質問に、アルザは戸惑うように眉をひそめる。



「陛下は、どんな国を作りたくて王になったのですか?――お父上を弑してまで、作りたい国があったのでしょう?」



 リーラは重ねて問う。


アルザがハッとしたように目を見開き、その顔がかすかに、苦しげに歪んだ。



「……君には兄が二人いるな」



 窓の外の闇に目を向け、アルザは言う。

リーラはただ頷いた。

たしかに兄が二人いる。


――腹違いの兄と、母を同じくする兄。

そのどちらも同じくらいに愛している。



「俺には妹がいた」



 もちろん知っている。

アルザの妹姫は、アルザが王位を取る直前に病死したはずだ。

ウィオン近隣の国々にはそう伝わっている。



「病死、というのは……」


アルザの眉が苦しげに歪む。



「……表向きそうなっているだけなんだ。占に殺される運命にあったあの子を、俺は救ってやることができなかった。俺はそういう世が許せないから、王になった」




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