Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-
リーラはふたたび視線を空へ移し、
「ウィオンは空が広いのね」
クロエは虚をつかれたように濃い緑の瞳を丸くし、リーラと同じように空を見上げた。
「そう……でしょうか? わたしには見慣れた空ですので、よくわかりません」
首をかしげるクロエに、リーラは「広いのよ」と、まるで教えふくめるように言って、小さく笑う。
「シュタインよりもずっとね。シュタインは、背の高い建物が多かったから」
「あぁ、たしか、聞いたことがあります。シュタインの建築技術はヴェルフェリア地方一だとか」
「えぇ。この国に来たとき、建物がみんな平たくてのっぺりしていたから、びっくりしちゃったの」
クスクスと笑うリーラに、クロエもつられたように微笑んだ。
「姫様が王妃となるあかつきには、ウィオンもシュタインの技術を学んで、きっとシュタインのように背の高い建物も増えましょう」
「そうね。でもわたくし、この国ののっぺりしたお家も、長閑で好きよ。せっかく可愛いんだもの。あまり変わってほしくはないわ」