Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-



 広い青は見ていて心が休まる。

ウィオンに来て十日あまり――自室の窓から空を見てため息をつくのが、もうすっかりリーラの癖になってしまった。



 十日。

十日の間なにをしていたかというと、なにもしていない。


婚礼の儀を執り行うにはいくつか踏まなければならぬ手順がこの国の伝統にはあるようで、沙汰を出すまで待てと言われているのだ。


最初のうちはクロエや女官を捕まえて王宮内を案内させていたが、立場上、行く先々で注目を浴びるので、肩身の狭い思いをするのに嫌気がさしてからは、あまり出歩かないようにしている。



 待てと言われた以上待っているが、リーラは不安を持て余していた。


どうもアルザは、リーラとの結婚に積極的ではないようだったからだ。


それを裏付けるかのように、この十日あまり、アルザはあまりリーラに会おうとはしなかった。



アルザが顔を見せないことがリーラの不安を余計に助長させていた。


――まさか、他に好いた人でもいるのだろうか。

このまま婚約を破棄されるのではないだろうか。



 物思いに沈んでいたリーラの思考を遮ったのは、部屋に近づく規則正しい靴音だった。



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