君と君と私。
4月 出逢い
☆―★―☆―★―☆
桜の舞い散る校庭を歩きながら、これから始まる新しい生活に思いを馳せている私の名前は清水明日香(しみず あすか)。
今日からこの高校の一年生。私の中学生活はむちゃくちゃだった。友達から裏切られ、ありもしない話を何度も流され、
少しだけだけどいじめもあった。おかげで何一つ楽しくない最悪な毎日だった
『新しい友達くらい出来ればいいな…』
そんなことを考えながら、綺麗な桜並木に気を取られ歩いていると ドンッ。と誰かの背中にぶつかってしまった。
「あっごっごめんなさい。私ちゃんと前を見てなくて」
私が声をかけるとその背中は私の方を振り返って
「大丈夫。俺は。それより君はケガしてない?」
この人言葉に刺が有るのか無いのかよく分からない。でも、私の事を心配してくれているのだろう。
「だっ大丈夫です。」
そう私が答えると、
「なら良かった。俺もちょっとボーッとしてたから」
そう言い私に向かって少し微笑んだ。
あれ?少し言葉の重さが変わったような?気のせいかな?
「そうですか…。」
私はそれよりも気になってしまった事がある。
この人、見た目は真面目そうなのに、どこか何か違う雰囲気を放っている。目の奥に吸い込まれそうな何ががあるような不思議な人。
でもそれ以上にこの人の容姿はとても綺麗な人?だった。
髪は漆黒のような黒で、それが少しさらさらと風になびいている。
そして、黒い眼鏡ごしに見える目はとても優しそうなのに平行な二重のおかげが強くも見える。そんな瞳に真っ直ぐ見つめられ思わず目を逸らす。
目を逸らしてまた驚いた。体型もモデル体型というのだろうか、とてもスラッとしていて女性からはもちろん男性からも羨ましいがられるタイプの体つきだと思う。その上身長の低い私がここまで見上げるということは身長もかなり高いのではないだろうか。
「おーい。君、大丈夫?体調悪い?」
あっ、いけない私の悪い癖。人と話している時に、いろいろ考えてまた話しを聞いていなかった。
「大丈夫です。本当に。」
「なら良かった。」
「あの?あなたも一年生ですか?」
「そうだよ。俺は岡本涼介(おかもとりょうすけ)。君は?」
「私は、清水明日香です。よろしくお願いします。」
「そんな固くならなくてもいいよ、俺ら同級生なんだし 、明日香ちゃんでいい?」
そう言い私を見て笑う。私男の子と話しすらしたことほとんどなかったのに、いきなり『明日香ちゃん』って、どうしたらいいの?
「明日香ちゃん。本当に大丈夫?」
「はい。大丈夫です。」
「何かあったら俺にでもいいから言えよ。」
「はい。ありがとうございます。」
私がそう言うと笑いながら、
「緊張しすぎ、明日香ちゃん。」
なんて言われてしまった。
「それよりもう新入生集まり始めてるたいだから、そろそろ行かない?」
「はい‼」
この時、私はまだ全然気が付けなかった。岡本くんの左耳にある小さくて壮大な秘密に。
〈なぁ。アール、俺とても興味のある子がいたよ。〉