君と君と私。
岡本くんと別れからかなり時間がたった。
今は入学式が、あと少しで終わろうとしている。座っているだけでかなり退屈。そして疲れる。
けどこのまますぐに帰れるわけではないらしい。一年生たちはこのあと在校生の案内で、いろいろな教室の場所を教えてもらいながら、これから、毎日のように通う事となる教室へと向かう。
保護者は先生からこれからの学校生活についての話しがこれから始まるそうだ。
私はもう色々諦めて人の波の流れる方へと歩き出した。
そういえばあの人は、相変わらずいなかった。あの人というのは私のお母さん。
私の家は私がまだ小さい頃に病気で、お父さんが亡くなった。
私の中の記憶のお父さんは、家族で花火を見たことが、私の中にある最初で最後の何があっても、もう増える事のないたった一つの思い出だ。
今日が入学式だというメールは、一応送ったのでほんの少し期待していた自分がいた。
式の合間も、もしかしたら来ていないか何度か確認している自分もいた。
別に誰かが悪い訳じゃあない。だってお母さんは、お父さんが亡くなってから、私を育てながら、お父さんから受け継いだ会社を海外にまで進出させたのだから。
これは私もすごい事だと思っている。だから我慢する事は辛くない。
会社の方がたまに様子を見に来てくれるけど、それ以外は中学生の頃からほぼ一人暮らしをしていた。お母さんの会社は、この時から海外の仕事が増えてきた。
始めは、半年に一度程の出張だった。私が中学二年生になる頃には、お盆と正月、長期の休みが取れた時以外は、家に居なくなっていた。
生活費は、月に一度お母さんから手紙が届くその中に申し訳なさそうに入っていた。
私は歩きながら、周りをぐるっと見渡してみた。みんな楽しそうに笑ってる。
友達と話している女の子たち、その隣を『なに部に入ろっか?』と話しながら歩いて行く男の子。
そして同じ学校出身の生徒でもいたのだろうか?女の子たちの人だかりができている。
その中を私はうつむきながら自分のクラスへと歩き出した。