先輩とわたし



橘先輩の声が聞こえる



こんなに真剣な声、初めて聞いた....





「.... じゃあ、付き合ってくれる?」


美玲さんが橘先輩の方に駆け寄って
細っこい華奢な腕を橘先輩の背中に回した




美玲さん、なんで....

嫌だ、なんで、抱きついてるの...



自分の黒い部分がふつふつと湧き出てくる
早くなる心臓の音が、密着してる流星さんに聞こえてしまいそう。




橘先輩は黙り込んだままで、
美玲さんを突き放したりしない。


何で、何で、




やっぱり..........









すると橘先輩は美玲さんの肩を持って
グイッと自分の体から離した




「本当はわかってるだろ?俺は、美玲に恋愛感情がないこと。もう、期待するな。」


「...... 」



下をうつむいて、小さな拳をギュッと握りしめている美玲さん
その姿が自分と重なった


私も、、橘先輩にああやって、言われてしまうんだろうか。
また告白したら、ああやって、言われてしまうんだろうか。





美玲さんは顔をパッとあげて
先輩の手を払いのけた





「あの子が、好きなんでしょ。」





さっきの切なげな目とは裏腹に、
力強い、まるで睨むような目をして言った




..... あの子?






「あの子って、誰だよ....」

橘先輩は本当に分からないといった顔をして言う



「分かってるくせに。早くしないと、あの子をねらってるやつ、他にもいるわよ。近くに、ね。」

「....... 」

「あーあ!私ずっと好きだったのになあ〜。でもやっと振られてスッキリしたわ。ま、私のこと甘く見ないでよ?切り替えて隼人より素敵な人、見つけるから。」

ニヤッと笑った美玲さんは
小悪魔で何故かこっちがドキっとした




「じゃあ、私もう帰るわ。明日からまた普通にしてよね」


「...... ありがとな。あと、ごめん。」


苦しそうに、申し訳なさそうに、
眉毛を垂らして、笑った


「そんな顔、しないでよ。私が辛いから。」



ふふっと笑って、グラウンドから去っていった

最後の最後まで、やっぱり素敵な女性だ






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