A secret word 〜心に秘めた想い〜
地獄の始まり
✻.
「あ、サクラ」
………。
「サクラー?」
休み時間、奏とすれ違い私を呼んだ。
けど、私は目を奏から逸らしそのまま横を通り過ぎる。
「ちょ、サクラって」
奏が私の腕をグッと掴んだ。
ああ……。
避けようと思ってたのに、やっぱり私には無理だ。
下を向いていた視線を、奏の方へと振り返った。
「サクラ? どうしたんだよ」
「あ、ごめん。なんかボーっとしてたみたい」
あははっ…と笑いかける。
明らかに不自然。
それでも奏は眉を軽く下げて「本当か?」と心配してる。
「本当本当。もう大丈夫!」
「そうか」
「それで、なんか用だった?」
「あー、いやお前の様子変だったから」
優しくされると、困る。
気にかけてくれるのは嬉しい。
だけど、こんなタイミングでなんて喜んでいいのか分からない。
「心配性め…」
そう呟いて、奏に向かって軽く笑ってみせた。