サガシモノ
「っこの、くそが!」


怒りで顔を真っ赤にした海がトイレの中に足を踏み入れた。


「ちょっと海!」


渚の声に気が付かないまま、3人の前に仁王立ちした。


「てめーら、いい加減にしとけよ!!」


そう怒鳴り、五十嵐孝からホースを奪うために手を伸ばす。


しかし海の手はホースからすり抜けてしまった。


「くそ!」


もう一度手を伸ばす。


しかしすり抜ける。


「なんだってんだよ!」


海は五十嵐孝へ向けて拳を振り上げた。


「無駄なことしてないで、ちゃんと見ようよ!」


見かねた渚が海の手を掴んで止めた。


海は顔を真っ赤にしたまま歯ぎしりをする。


悔しいけれど、過去に起きた映像に触れる事なんてできない。


あたしたちがやる事は、イジメを止める事じゃないんだから。


海は歯を食いしばり4人から身を離した。
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