サガシモノ
教卓は撤去された状態の教室では探す場所は少なかった。


「飯田アキラって人にとって腕時計は宝物だったんだね」


渚がそう呟いた。


「うん……」


そう返事をして海がおろしてくれた机の中を1つずつ調べて行く。


中はほとんど空っぽだ。


時々古びたノートが出て来る以外、収穫はなにもなかった。


机の中を確認しながら、ふと違和感が胸の奥を刺激してきた。


「どうしたの咲紀」


「うん……なんだかちょっと変だなって思って」


「変ってなにが?」


「なんだろう……」


そう聞かれるとハッキリとわからない。


「おい、さっさと調べろよ。もう3時になるぞ」


海にそう言われて、あたしたちは探し物に戻ったのだった。
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