サガシモノ
☆☆☆
五十嵐孝の家は歩いて20分ほどの山間にある一軒家だった。
とても古い一軒家で庭は草が生え放題だ。
表札も取られていて、人が住んでいる様子はなかった。
「引っ越したんだな」
家の周りをぐるりと回って、陽がそう呟いた。
「そうだね……」
いつまでも同じ場所に止まっているワケじゃないとわかっていたけれど、少し落ち込んでしまいそうになる。
五十嵐孝の家族は今どこにいるんだろう。
そう思った時だった、あたしたちの話声が聞こえて来たのか隣の家の玄関が開いた。
中から50代くらいの女性が出てきて、こちらへ顔を向ける。
「こ、こんにちは。あの、五十嵐孝さんのお宅って……」
黙っていては不審者になってしまうと思い、咄嗟にそう聞いていた。
すると女性は「あぁ、五十嵐さん?」と、可愛らしい笑顔を浮かべた。
「は、はい」
「五十嵐さんなら、何年か前に引っ越しをされたわよ? あなたたち、五十嵐さんの塾生?」
そう聞かれて、あたしは陽を見た。
「そ、そうです。中学校時代にお世話になってました」
咄嗟にそんな嘘をつく。
五十嵐孝は生きている?
塾生ってことは、五十嵐孝は今塾の講師をしているのか。
五十嵐孝の家は歩いて20分ほどの山間にある一軒家だった。
とても古い一軒家で庭は草が生え放題だ。
表札も取られていて、人が住んでいる様子はなかった。
「引っ越したんだな」
家の周りをぐるりと回って、陽がそう呟いた。
「そうだね……」
いつまでも同じ場所に止まっているワケじゃないとわかっていたけれど、少し落ち込んでしまいそうになる。
五十嵐孝の家族は今どこにいるんだろう。
そう思った時だった、あたしたちの話声が聞こえて来たのか隣の家の玄関が開いた。
中から50代くらいの女性が出てきて、こちらへ顔を向ける。
「こ、こんにちは。あの、五十嵐孝さんのお宅って……」
黙っていては不審者になってしまうと思い、咄嗟にそう聞いていた。
すると女性は「あぁ、五十嵐さん?」と、可愛らしい笑顔を浮かべた。
「は、はい」
「五十嵐さんなら、何年か前に引っ越しをされたわよ? あなたたち、五十嵐さんの塾生?」
そう聞かれて、あたしは陽を見た。
「そ、そうです。中学校時代にお世話になってました」
咄嗟にそんな嘘をつく。
五十嵐孝は生きている?
塾生ってことは、五十嵐孝は今塾の講師をしているのか。