サガシモノ
「本当に!?」


あたしは海の隣に立ってその部屋の表札を見た。


203、松田。


色あせた表札にマジックでそう書かれているのが見えた。


間違いない、ここが松田邦夫の部屋だ!


表札の苗字も同じということは、本人がいる可能性だってある!


そうとわかると、途端に緊張してきてしまった。


松田邦夫本人に会えたとしても、何をどう説明すればいいんだろう?


あの旧校舎で起こっていることを信じてくれるとは思えない。


突然押しかけてしまったんだ、追い返されるかもしれない。


グルグルとよくない考え方が頭の中を回りはじめた。


「とにかく、中にいるか確認してみよう」


陽がそう言い、前へ出てチャイムを押した。


中は狭いのか、チャイムの音がすぐそばから聞こえて来る。


しかし、待ってみても中から返事はなかった。


陽がもう一度チャイムを鳴らす。


それでも返事はない。
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