サガシモノ
「で、面白い話ってなんだよ?」


近くのファミレスまで移動して、健がそう聞いて来た。


椿山高校の旧校舎の話をどうしても健にしたくなって、こんな夜に呼び出してしまったのだ。


健もあたしと同じオカルト部だから、きっと飛びついてくれるはずだ。


「健、椿山高校の旧校舎が本気でヤバイって知ってる?」


昼間近藤先輩に聞いた話を、あたかも最初から知っていたかのように話し始める。


最初は半信半疑な様子だった健も、話を聞くうちにだんだん興味を持ってきたようで、目が輝きだしていた。


「地蔵山って、地蔵坂があるあの山だろ? 新校舎は随分離れた場所に作ったんだな」


「そうだよね? それなのに旧校舎の建物がまだあるっていうのが気になるの」


建物はほうっておけば劣化していくし、若者のたまり場になったりすることもある。


取り壊してしまった方がずっといいのだ。


「面白そうだな。でも近藤先輩は絶対に行くなって言ってたんだろ?」


「そうなの。それってさ、近藤先輩たちも行った事がない場所ってことだよね?」


後輩に釘を刺しておいて自分たちだけで旧校舎へ向かう事はないはずだ。


「先輩たちも行った事のない場所か……」


健はそう呟き、水を飲んだ。


さっきから好奇心で瞳孔が開きっぱなしだ。


「あたしたちが先に行って、幽霊とご対面! とか、すごく面白そうじゃない?」


「あぁ、そうだな。本気でヤバければ逃げればいい」


「じゃぁ決まりね! オカルト部の1年生を全員誘って行こう!」


こうして、あたしたちオカルト部の夏休みは幕を開けたのだった。
< 13 / 214 >

この作品をシェア

pagetop