サガシモノ
眼球だけ動かして隣で眠っている両親を確認するけれど、2人ともぐっすりと眠ってしまっていて気が付いていない。


虫の泣き声も消え、車の音も消え、あたりは恐ろしいほどの静寂に包まれている。


あたしの首元にあった布団が微かに持ち上がる。


中から冷気が漏れ出して顔を冷やしていく。


呼吸は浅く短くなっていき、今にも止まってしまいそうだ。


冷たい空気に包まれた中、誰かの手があたしの腕を掴む感覚があった。


悲鳴を上げたいのに、声もでない。


あたしは目を見開いて布団の隙間を見るしかできなかった。


「キ……テ……」


微かに聞こえてきたそんな声。


弱弱しくても、あたしの脳に直接届いてくる声。


「キ……テ……」


あたしの腕を掴んでいて手が、あたしの肩まで移動してきた。


冷たい手の感覚。


布団の隙間は広がり、その中からうごめくものが見える。
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