サガシモノ
「……死ぬ気なのかもしれないな」


そう言ったのは陽だった。


陽は飯田アキラの姿から目をそらさず、ジッと見つめている。


「死ぬって……」


やっぱり、自殺だったのか。


今までの映像と、飯田アキラが死んでいるという事実を照らし合わせると、そうだろうという予感はみんなあったと思う。


だけど実際にこうして映像として見る事になるなんて、思ってもいなかった。


飯田アキラは薬品を水で流し込んでいく。


その目には涙が浮かんでいて、本当は死にたくないのだという気持ちが痛いくらいに伝わって来た。


それでも飯田アキラは死ぬ事を選んだんだ。


イジメが原因で生きていく力を失ってしまったんだ。


飯田アキラは科学準備室から太いロープを用意すると椅子に乗り、それを木製のカーテンレールにくくりつけはじめた。


「嘘でしょ……やめてよ……」


渚が左右に首をふってそう呟く。
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