サガシモノ
☆☆☆

中に入ってゆっくり説明しろと言うお父さんの言葉を断って、健は玄関に立ったまま旧校舎についての説明を始めていた。


幽霊だとか、イジメだとか、探し物だとか。


色々なワードが出て来る健の話に真剣に耳を傾けてくれている両親。


信じてもらえる自信なんてなかったけれど、不意に健がポケットに手を入れて汚れた生徒手帳を取り出した。


それはあたしたちが教室で見つけたお母さんの生徒手帳だった。


「その探し物をしている最中に、これを見つけました」


そう言ってお母さんに生徒手帳を手渡した。


「まぁ、懐かしい……!」


手帳を開いたお母さんは思わずそう言っていた。


「いつの間にかなくなったと思っていたのよ。まさか咲紀が探し出すなんて思ってもいなかったわ」


そう言い、嬉しそうにほほ笑んだ。


「それに、あの旧校舎でなくなった子がいることはお母さんも知ってるわ。だから、お母さんはあなたたちの話を信じてあげてもいいけれど……」


そこまで言い、チラリとお父さんを見た。


お父さんはまだ仁王立ちをして険しい表情だ。


「健君……と言ったな?」


「はい」


健は背筋を伸ばして頷いた。
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