サガシモノ
☆☆☆

チャイムを鳴らすとすぐに家の中から足音が聞えて来た。


「悪い、まだ原稿できてないんだ!」


そんな男の声が聞こえてきてあたしたちは目を見交わせた。


誰かと勘違いしているようだ。


「もう少しででき上がるから、上がって待ってて……」


そう言いながら玄関の戸を開けて、あたしたちを見て唖然とした表情を浮かべた。


藍色の甚兵衛を着たその男は、髭は生えているもののどう見ても武田陽太だった。


高校時代から外見的変化があまりなかったみたいだ。


「武田陽太さんですよね?」


陽が真っ直ぐに武田陽太を見てそう聞いた。


「あ、あぁ。そうだけど……君らは?」


ボリボリと頭をかいてそう聞く。


「俺たちは椿山高校の在校生です」


「え? 高校の……?」


武田陽太は瞬きを繰り返した。


「武田さんに聞きたいことがあるんです。旧校舎で起きた事で」


「あぁ~。でも今忙しいんだ締切今日なんだよなぁ」


また頭をボリボリとかいて困った表情を浮かべる。
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