サガシモノ
職員室
先生が生徒のものを盗むなんて信じられない!


腕時計を手にして教室から逃げ出す様子を見て、あたしは唖然としてしまった。


とても優しそうな顔の先生だったから、余計にショックな出来事だった。


そして、記憶は消えて明かりだけが残った。


「職員室へ行ってみよう」


陽が真剣な表情でそう言い、歩き出した。


あたしもその後に続く。


あたしたちの目的はただ探し物をすること。


そうわかっているのに、心はモヤモヤとした嫌な気分に覆われていた。


生徒にとって先生は信用している相手だし、なにかあれば助けてくれるような、大きな大きなそんざいだ。


それが踏みにじられたような気分だった。


歯を食いしばって歩き、職員室の前まで移動してきた。
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