サガシモノ
「あたしたちも必死で調べてるんです」


なにをかはここでは言わない。


言わなくても、きっと水原先生はなにもかも知っているはずだ。


「確かに、俺と吉原先生は交際していた」


額の汗をぬぐい、水原先生はそう言った。


「どうして別れたんですか?」


陽がそう聞くと、水原先生はしかめっ面を浮かべた。


「君たち、もう少しデリカシーのある聞き方はできないのか」


「デリカシーなんて言っている場合じゃないんですよ。俺たち、栞を助け出さなきゃいけない」


陽が水原先生を睨み付けてそう言った。


水原先生は一瞬目を見開いたが、そのことについて聞いてくることはなかった。


「吉原先生に別の人ができたんだ」


水原先生は吐き捨てるようにそう言った。


「嘘ですよね?」


あたしは間髪入れずそう言った。


吉原郁美の方から別れを切り出したのなら、水原先生の写真を取っておくとは思えない。


しかも、写真に画鋲まで刺されていたのだ。


水原先生が憎まれるだけの事をしたのだということは、すでにわかっていた。


「生徒に嘘をつくのはやめなさい」


校長に言われて水原先生は大きな体を小さくした。
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