サガシモノ
「俺が、彼女に借金を肩代わりしてもらったんだ」


大量の汗を拭きだしながら、水原先生はそう言った。


借金の肩代わり!?


思ってもいなかった言葉にあたしは一瞬言葉を失った。


「それ、無理やりですよね?」


そう言ったのは渚だった。


「む、無理やりだなんて……!」


慌てて否定するけれど、吉原郁美の意思なら水原先生を憎むこともなかっただろう。


水原先生は言葉巧みに吉原郁美に借金を押し付けたのだ。


「水原先生、生徒に本当の事を言いなさい」


校長が厳しい口調でそう言い、強く机を叩いた。


花瓶がぐらりと揺れて、こちら側へと倒れて来た。


割れはしなかったが、飾られていた白い花は床に叩きつけられて花びらが舞った。


「……借金を彼女に押し付けたんだ」


水原先生は膝の上で拳を握りしめ、あたし達の顔も、校長の顔も見ずにそう言った。


「やっぱり……」


陽が呟く。


「その借金と、飯田アキラの腕時計について関係あるんですか?」


健がそう質問をした。
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