サガシモノ
「咲紀、そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ。五十嵐孝さんは今警部さんなんだってさ」


健の言葉にあたしは驚いて目を見開いた。


てっきり警察の真逆の職業の方かと思ってしまった。


「飯田アキラに悪い事をしてしまったという罪悪感から、もう悪い事はしないと誓って、警部さんになったんだって。それでもこの街にいることが辛くて、県外に出てたみたい。今日は探し物のために帰ってきてくれたんだよ」


渚がゆっくりと説明してくれた。


そうだったんだ。


五十嵐孝は飯田アキラを殺してしまったと思って、随分と苦しんだのだろう。


「明には本当に悪い事をしてしまった。死んでから悔やんでも遅いのにな」


そう言う五十嵐孝の目には涙が浮かんでいる。


心から後悔しているから、今ここに来てくれているんだ。


「もうすぐ時間になります。行きましょう」


陽がスマホを確認してそう言い、9人になったあたしたちは旧校舎へと足を踏み入れたのだった。
< 197 / 214 >

この作品をシェア

pagetop