サガシモノ
「やばいって、これ……」


渚が呟く。


「今、何時?」


入口の近くまで来て健が誰ともなくそう聞いた。


あたしはスマホを取り出して時間を確認した。


「1時40分」


「もうすぐ2時か。いい時間帯だな」


「って、本当に中に入るつもり?」


あたしは思わずそう聞いていた。


ここに車では旧校舎の中を探検する気満々だったけれど、目の前まで来るとその雰囲気に圧倒されてしまう。


「建物の外を回るだけにしておこうか?」


健の言葉にあたしは小さく頷いた。


せっかく幽霊を見る事ができるチャンスだけれど、さすがに怖気づいてしまった。


「じゃぁ、写真だけ撮っておこうか」


栞がそう言ってカメラを旧校舎へ向けたその時だった。


ギッ……ギッ……。


と、微かな音が聞こえて来た気がして、あたしは息を止めた。


「今の音って……?」


そう聞くと、誰もが旧校舎へ向いたまま目を見開いている。
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