サガシモノ
吉原郁美は顔を真っ赤にして水原先生を睨み付けている。


が、水原先生の方は涼しい顔をして吉原郁美を見下ろしていた。


「あなたが腕時計をとったんでしょう!?」


吉原郁美が水原先生に問い詰める。


「それがどうかしたのか? あの時計は元々生徒のものだ。俺はそれを本人に返しただけだ」


そう言うので咄嗟に「嘘だ」と、呟いていた。


本当に飯田アキラの元や、その家族に戻っていれば、こんな探し物だってしなくてよかったはずだ。


「どうしてそんな嘘をつくの!?」


吉原郁美は悲鳴に近い声を上げる。


「嘘だなんて、どうして言える?」


「だって、あの腕時計は……」


そこまで言い、口を閉じてしまう吉原郁美。


飯田アキラはすでに死んでしまい、返す事なんてできない。


そう言いたいけれど、口に出せない様子だ。


2人の言い合いは更に続いていく。
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