サガシモノ
みんなにもさっきの音が聞こえたみたいだ。


「聞こえたよな、みんな?」


健が聞くと、全員が頷く。


「今のって、旧校舎の中から聞こえて来たんだよね?」


あたしがそう聞くと、健は「たぶんな」と、頷いた。


もう1度耳をすませてみるけれど、木がキシムような音は聞こえて来ない。


今は風の音と葉が揺れる音だけが聞こえてきている。


「中に入ってみるか」


そう言ったのは海だった。


「本気!?」


渚が目を丸くして聞き返す。


「あぁ。夜の雰囲気に騙されてるだけだって。先輩たちでも入った事がないんだろ? それを俺たちがやり遂げたら自慢になるぞ」


海はそう言いながら、躊躇することなく門の中に入って行く。


「どうする?」


あたしは健に聞く。


「海を1人で行かせるわけにもいかないだろ」


健はそう言い、海の後を追いかけたのだった。
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