サガシモノ
幽霊を鎮めるためにはその気持ちを理解してやることが必要だと、なにかの本で読んだ事があった。


健はそれを実践しようとしているのかもしれない。


でも……あたしたちは幽霊を見る事すら、初めての経験なんだ。


霊たちは健の声が聞こえていない様子で何かを探し続けている。


時折、砂嵐のテレビ画面のように彼らの体が白黒に染まる。


存在自体が大きくブレているようだ。


誰がどう見ても、彼らはこの世のものではなかった。


体中から汗が噴き出すのを感じる。


逃げたくても逃げられない。


あたしたちはどうなってしまうんだろうか。


彼らはウロウロと歩き回って何かを探しているだけで、あたしたちの方を見ようともしない。


一体どうすれば解放されるのか、わからなかった。


それからどのくらいそうしていただろうか?


不意に、彼らの動きが止まったのだ。


目の前に立っている1人の男子生徒がゆっくりと顔をこちらへ向ける。


輪郭が歪み、目や鼻の位置もかろうじてわかるようなその顔に、悲鳴が上がりそうになる。
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