サガシモノ
男子の制服は学ランという形から大きな変化はないままだ。


だけど、胸ポケットに白いラインが入っているのは現在の制服じゃない。


だから見た瞬間昔の制服だと判断できたんだ。


「おい、ちょっと待てよ、栞はどうした?」


陽が周囲を見回してそう言った。


「え?」


そう言われて気が付いた。


栞の姿がどこにもないのだ。


「うそだろ。旧校舎に置いてきたか……」


海が後ろを振り向いてそう呟いた。


後方には今もまだ不気味な雰囲気の旧校舎が建っている。


来る時には少し気味が悪いと思う程度だったけれど、今では絶対にその中に入りたいとは思えなかった。


「まじかよ……」


健が頭をガシガシと乱暴にかいた。


「あれ、ライトが直ってる……」


旧校舎の中では使えなかったライトが、いつの間にか明かりをつけていた。
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