サガシモノ
「行くしかないだろ」


陽はそう言い、1人で大股に歩き出した。


「待ってよ陽」


渚が慌ててその後を追いかけて、あたしもその後に続いた。


また旧校舎の中に入るなんて嫌だったけれど、さすがに栞を1人にはしておけなかった。


もしかしたら動けなくなっていたのかもしれないし。


「また入るのかよ」


海がため息交じりにそう呟いた。


「全員で入って、栞を連れてすぐに出てくればいいでしょ」


渚がそう言い、海の腕を掴む。


「わかったよ。さっさと行こうぜ」


なんだかんだと言いながらも、海が先頭に立って門をくぐった。


「あれ……?」


門をくぐった瞬間、あたしは違和感に気が付いていた。


最初に感じた肌寒さがない。


門の中と外で変わらない夏の暑い空気が流れている気がした。
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