サガシモノ
どうすれば許してもらえるんだろう?


「ねぇ栞、こっち向いて」


そう言って栞の肩に手を置いた時だった。


氷のような冷たさが指に伝わってきて、あたしは勢いよく手をひっこめた。


「どうしたの咲紀」


渚が不思議そうな表情であたしを見て来る。


「な……んで……」


なんで体がこんなに冷たいの?


そう言いたかったけれど、言葉が喉の奥に引っかかって出て来なかった。


昨日、旧校舎で感じたような寒気がこの部屋の中に充満していることに気が付く。


「栞……?」


あたしはテーブルを回って栞の前に移動した。


その顔を見た瞬間悲鳴を上げ、両手で口を覆っていた。


「なによ咲紀……」


驚いた渚があたしの隣に移動してきて、栞の顔を確認した瞬間悲鳴を上げた。


「なんで? どうなってるの? 栞はどこ?」


混乱して自分でも理解できないような言葉を口走る。


「やばいよ咲紀。逃げよう!」


渚に腕を掴まれて無理やり立ち上がらされる。


しかし足に力が入らず、その場に座り込んでしまった。
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