サガシモノ
「ねぇ、渚……」


あたしは渚の手を握りしめた。


「うん、わかってる」


渚は少し青ざめた顔でそう言い、頷いた。


栞のお母さんのセリフがさっきと完全に一致しているのだ。


あたしたちの姿も見えているはずなのに、気にしている様子はない。


「やっぱりおかしいよ」


そう言っても、男子たちは栞の家に上がって行く。


「どうする?」


渚があたしにそう聞いて来た。


「どうするって……」


また栞のあんな姿を見るのかと思うと気がめいる。


しかし、男子たちだけで行かせるのも嫌だった。


「行こうか」


渚があたしの手を握り返し、そう言ったのだった。
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