サガシモノ
「いや、先輩は1人になったその日の内に海外へ飛んだんだ。俺にこの話を残してな」


近藤先輩はそう言い、オレンジジュースを飲んだ。


「海外留学って、もしかして旧校舎から逃げるためですか?」


そう聞くと、「おそらくはね」と、近藤先輩は頷いた。


そこまでしないと逃げられないなんて、絶望的だ。


あたしは面々を見回した。


時間がかかればかかるほど、みんなが1人ずついなくなるかもしれない。


そんなの、耐えられるわけがなかった。


「探し物のヒントはなにかないんですか?」


陽が重要な部分を質問した。


近藤先輩は難しそうな顔をして「それがわかっていれば、先輩も海外になんていかずに済んだんだろうけどな」と、答えた。


ヒントになるようなものはなにもない。


自分たちで探し出すしかないようだ。


あたしたちは顔を見合わせた。


これから毎晩旧校舎へ向かい、探し物を手伝う。


時間がかかればかかるほど人数は減って行く。
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