サガシモノ
「見ろよ、あいつらもいる」


陽が教室の奥でおしゃべりをしている男子生徒3人を指さしてそう言った。


その生徒たちを見た瞬間、顔の歪んだ幽霊たちと姿が重なった。


顔の輪郭もしっかりと見えているが、全体的な体格や雰囲気が同じだ。


本来の姿はこちらなのかもしれない。


あたしは3人の行動を目に焼き付けるようにジッと見つめた。


3人はクラス内でもとても仲がいいようで、さっきからふざけ合っている。


そんな中、すぐ近くに1人で机に座っている男子生徒がいる事に気が付いていた。


お弁当を広げているが、食べるペースも随分と遅く、ずっと俯いたまま顔も上げない。


3人は時々その男子生徒に話かけられているが、ほとんど無視されているみたいだ。


もしくは、男子生徒が返事をできないような事を言っているのかもしれない。


見たところ、男子生徒の方が立場は弱そうだし。


「教室の中に入ってみるか」


そう言ったのは陽だった。


あたしは目を見開いて陽を見る。


「ちょっと、本気?」


渚は子供のようにイヤイヤと左右に首をふる。


「嫌なやつは来なくていい」


陽は渚へ向けて冷たくそう言い放つと、1人で教室へと足を踏み入れた。
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