サガシモノ
陽が教室へ入って行っても、誰も見向きもしない。


きっと陽のことが見えていないんだろう。


幽霊が自分の記憶を見せているだけなら、教室に入って行っても特に問題はないのかもしれない。


もっと近くで3人の行動を確認してみることで、ヒントも出て来るかもしれない。


そう思ったあたしは教室のドアの前に立った。


陽はどんどん教室の奥へと足を進めている。


大丈夫、きっと、大丈夫。


自分自身にそう言い聞かせて、足を一歩前へ踏み出した。


教室に入ると自分の体が蛍光灯で照らしだされるのがわかった。


しかし、床を見てもあたしの影はどこにもなかった。


ここで実在していないのは、あたしの方ということか。


「咲紀、大丈夫か?」


後ろから来た健にそう声をかけられて、あたしは頷いた。


「大丈夫だよ」


怖がっていた渚も海に連れられて教室の中に入ってきている。


みんなで手分けをして探せばきっと、すぐに見つかるはずだ。
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