サガシモノ
「あ、そういえば……」


「なにか思い出した?」


「自転車だったかもしれないわね」


そう言い、懐かしそうに目を輝かせるお母さん。


「自転車……?」


「そうよ。通学用の自転車を自分のお小遣いをためて買ったのを思い出したわ」


「そうなんだ?」


「えぇ。今よりも価格が高めで、お金をためるのに随分時間がかかったのよ。だから自分の好きな自転車を買えたときはとっても嬉しかったの」


お母さんはまるで少女のように頬をピンク色に染めてそう言った。


自転車かぁ……。


あたしはぼんやりと3人の顔を思い出していた。


あの3人は広間を探し歩いていたし、当てはまらなさそうだ。


「そっか、ありがとうお母さん」


あたしはそう言い、自分の部屋へと向かったのだった。
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